雨の中

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「ねえ、憶えてる? 亜希が昔、話してくれた話」  ハスキーがかった声が鼓膜を震わす。最初は体に手を回しただけだったが、今はもうちゃんと抱きしめられていた。 「小学校の帰りに、こんな風に話してたよ」  雨って、いやな人が多いじゃん? でも私はね、こう考えるの。  あの一粒、一粒が小さな幸せだって思うの。  雨粒ってすごく小さいでしょ? 幸せだってきっとそうだから。本当に小さくて、些細なことが集まれば皆が言うになるんじゃないの?  傘に弾ける雨音。ランドセルを背負った私と、友都。  そうえいば、そう言っていた。私が忘れかけていたことなのに、憶えててくれてたんだ……。 「だから、俺、この天気に告白しようって思ったんだよ? 俺にとって、思い出の天気だから」  ぎゅっ、と友都の力が強くなる。 「本当に好きだよ―――」  私も、ずっと、そう思ってた。  苦しむくらい好きで、話せなくても、たとえ近くに居なくても、ただあなたがいるだけで良かった。それだけで、嬉しかったのに。  それ以上の、幸せがあるなんてっ――‼ 「私も、同じ」  ずっと、私達の空の上に雨が降り続けますように。
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