◇たからもの

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 電話をして数分で慎也さんは来てくれた。私が前駆陣痛だと言っていた声が電話口から聞こえたらしく、手土産に洋菓子店のプリンを購入してきてくれた。 「いーよ。宗が心配するのも分かるし」 「すみません」 「全然。英那さん、今痛みはどう? もう痛くない?」 「はい、もう痛みはないです」  痛みは本当に驚くほどになくなっていて、さっきまでの痛みはなんだったんだと思うくらい。 「なら良かった。産科でも言われてると思うけど、十分間隔で一時間続いた時は本陣痛だから連絡しよう」 「はい。でも、慎也さん忙しいんじゃ?」  救急もやっているって言ってたし、絶対忙しいと思うんだけど…… 「一応、救急もしているけど特別棟の患者さん優先だからね。あの病院は俺以外にもいい医者沢山いるから」 「そうなんですね……」 「まぁ、特別棟所属医師だしね。それに、今をときめく佐山國宗に言われたら来ないわけにはいかないからね」  慎也さんはそう言うと、宗一郎さんが出したお茶を飲んだ。
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