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勝ったのはどっち?
四年三組の教室に、先生の大声が響き渡ります。
「しぐれを責めても仕方ないって、なんでわからねーんだ!」
先生はカツカツとしぐれさんを取り囲む輪の中に入り、かおをにゅっと突き出しました。
「しぐれ、わかっただろ? お前が無理に運動会に出てもいやな思いをするだけだって」
ひなた君は、何か違う気がしたのですが、何も言えません。
しぐれさんは、うつむきプルプル震えています。
「もう、いいです」
「そうか、わかったならいいんだ」
その瞬間、しぐれさんはかおを上げました。
「もういい! 私は運動会も遠足も、ううん! 二度と学校なんか行くもんか!」
「おい、こら!」
先生はしぐれさんの肩をつかみます。が、女の子は振り切って教室を出て行ったのです。
先生も四年三組のみんなも戸惑い、動けなくなりました。
ほどなく、遠くから女の子の笑い声が聞こえます。
「キャハハハハ」
声は、雨がたたきつける校庭から聞こえてきました。しぐれさんが、トラックを走り回っています。
中止になった運動会を続けるかのように。
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