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ひなた君は、下駄箱のある校舎の入り口から、校庭にかおを向けます。
雨はますます激しく地面をたたきつけています。
しぐれさんはケラケラ笑い、トラックをグルグル回っています。
「しぐれさん! 帰ろう!」
力一杯ひなた君は叫びました。
しぐれさんは、笑いをやめません。
「キャハハ私の勝ち! 私は本当の雨女だもん。君はニセモノの晴れ男だね」
ニセモノの晴れ男。ひなた君の血が煮えたぎります。
「おれはニセモノなんかじゃない!」
「ずーっと雨が降ってればいいんだ! 運動会も遠足もなくなるもん!」
しぐれさんは、オクラホマミキサーを一人で踊り出しました。
校庭をたたきつける雨しぶきは玄関まで入りこみ、ひなた君は、ヒッと身をすくめます。
勉強もスポーツも得意で明るいひなた君は、クラスの人気者。
でも、雨は苦手でした。雨の日は、無理して学校に通い、しばしば休むこともありました。
今日は運動会だから、傘も雨合羽も用意していません。
それでも。
「おれはニセモノじゃないんだあああ!」
ひなた君は、土砂降りの校庭に走り出ました。
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