勝ったのはどっち?

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「ひぃやああ!!」  ひなた君は、冷たい雨粒にたたきつけられ、身震いが止まりません。  すぐ、引き返したくなりました。  しぐれさんがハッと気がつき叫びます。 「やだ! 来ないで!」 「おれは、ニセモノじゃない!」  跳ねる水の気持ち悪い感触に耐えながら、ひなた君は、しぐれさんの元に駆けつけます。  だってしぐれさんは、もっとつらい思いをしてきたのだから。  好きで雨女になったわけじゃないのに、遠足や運動会に出るだけで責められたのだから。 「わかった! ひなた君は本物だよ!」  しぐれさんも、ひとり運動会をやめて、ひなた君のもとに駆け寄りました。  二人は雨が降りしきる校庭で、見つめ合います。 「ひなた君! 雨、嫌いなんでしょ!」 「うん。でも、気持ち悪いだけで死ぬわけじゃないし」  しぐれさんが、ひなた君の腕をそっとさすります。 「うそ! すごく震えてる! 病気になっちゃうよ!」  しぐれさんは、ひなた君の腕を引っ張って、校舎玄関の床に座らせました。  再びしぐれさんは雨の校庭に戻ろうとしますが、今度はひなた君に腕を引っ張られます。 「情けないなー。おれはやっぱりニセモノだ。しぐれさんに晴れるって約束したのに」  ひなた君は、玄関の床にゴロンと寝転がりました。合わせてしぐれさんも、床に座り込みます。 「私、運動会出るべきじゃなかったね」 「そっか」  ガバッとひなた君は、起き上がります。 「じゃおれ、これから運動会と遠足、出るのやめる」
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