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六時間目が終わり、四年三組のほとんどが下校しました。
しかしひなた君は、ポツンと席に着いたまま。
午後になり雨が強く振りだしたので、外に出たくなかったのです。男の子は教室で雨が落ち着くのを待ってました。
雨がやまないかな? 窓の外にかおを向けます。ひなた君は信じられない光景を目撃しまいました。
女の子が傘をささず、ずぶぬれのまま笑っていたのです。
「気持ち悪い! アイツおかしい!」
女の子は、いつも教室の隅っこにいるしぐれさんでした。
しぐれさんは、だれもいない校庭をスキップしたり走り回ったり歌ったりと、大忙し。
「ヤバイもの見ちゃった」
雨が小降りになったので、ひなた君は帰ることにしました。雨合羽を着込みランドセルにカバーをかけて、立ち上がります。
そのとき。教室の扉がガラッと開きました。
ずぶぬれのしぐれさんが、教室に入ってきたのです。
「入ってくんなよ!」
雨が嫌いなひなた君は、雨にぬれた子も大嫌い。見ているだけで自分にずぶぬれが伝染しそうです。
「ごめんなさい。だれもいないと思って。すぐ出るから」
しぐれさんは自分のランドセルと傘を取ると、うつむいたまま教室を出て行きました。
いつも笑顔のひなた君からこんなキツイ言葉が出るなんて、めったにないこと。
男の子は謝ろうと、教室を出ました。廊下をパタパタと走る女の子を追いかけます。
クラスで一番足の速いひなた君、あっという間に追いつきました。
「しぐれさん、ごめん!」
ずぶぬれの女の子は、立ち止まり振り返ります。
「気にしてないよ。君みたいなカーストトップの子は、私みたいな底辺、気持ち悪いよね」
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