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せっかく謝ったのにあんまりな返事です。
「カーストトップってなんだよ! おれは雨が嫌いなんだ。お前こそ変だ。雨の中暴れて」
しぐれさんは、首をかしげてほほえみます。
「私は雨が好きなだけだよ」
ひなた君の大きな目が、固まりました。
「しぐれさん、それ、おかしい」
「私はおかしいよ。でもひなた君、水は飲まないの? おふろに入らないの?」
「当たり前のこと聞くな! ふろは毎日入ってるに決まってるだろ」
「飲み水もおふろの水も、雨だよね?」
ひなた君のまん丸な目が、プルプル震えます。
「飲み水は浄水場で消毒してるけど、雨水は汚れてる」
しぐれさんの細い目が、線のようになりました。
「そうね。私は汚れてるもんね。じゃ」
女の子は背中を向けて、ぺたぺたと歩き出しました。
ひなた君は、びしょぬれの女の子に声を張り上げます。
「かさ、さして帰るんだぞ!」
しぐれさんの背中がピタッと止まりました。
「私、町ではちゃんと、かさをさしてるよ」
くるっとしぐれさんは振り返りました。
「そうしないと、君みたいな子に、うるさく文句言われるから」
またしぐれさんにひどい言い方をされ、ひなた君はショックのあまり動けません。
言い返す間もなく、しぐれさんはパタパタ廊下を走って消えてしまいました。
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