雨女さんはひとりぼっち

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雨女さんはひとりぼっち

「明日は滝山公園にクラスで遠足だ。遅れるなよ」  四年三組の担任は、大学を出たばかりの男の先生です。  先生の呼びかけにみんな「はーい!」と返事します。 「ずっと雨だが、ひなた、お前が来れば晴れるから大丈夫だ」  先生がひなた君の頭をなでると、クラス中で「ひなた」「ひなた」と盛り上がります。  いえ、一人だけ静かな子がいました。  雨の校庭で笑っていたしぐれさんです。  先生は、しぐれさんの机にカツカツと近づきました。 「しぐれ、お前は遠足苦手だろ? 無理に参加しなくていいからな」  ポンと先生に肩をたたかれたしぐれさんは「はい。休みます」と小さくうなずきました。 「えー」「ずるーい」「自分勝手」  教室中から上がる不満の声。ひなた君も何か言いたくなりましたが、先生は「うるさい!」と声を張り上げました。 「多様性ってわかるか? しぐれは、普通の子供じゃない。世の中にはいろんな人間がいるんだ。遠足好きもいれば嫌いなものもいる。おれは、お前たちには互いの気持ちを大切にする大人になって欲しいんだ」  教室はシーンと静まり返りました。  ひなた君には、先生の言うことがわかりません。  遠足は全員で参加した方が楽しいのに。しぐれさんも遠足に出た方がいいのに。
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