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遠足の帰り、ひなた君はしぐれさんの家を訪ねました。寄り道しないでまっすぐ家に帰るべきですが、いてもたってもいられません。
「しぐれさん、本当は遠足に行きたいんだよね?」
ひなた君は、しぐれさんの部屋で思い切って聞いてみました。
「……行きたくないよ」
「雨が降ると、みんなに悪いと思ってるんだろ?」
しぐれさんは、ひなた君にまくらをぶつけます。
「勝手に決めないで! 私、本当に、遠足とか運動会とか大っ嫌いなの!」
いきなりまくらをぶつけられてひなた君はカッとなります。が、しぐれさんの目から涙がボロボロと流れていました。
その涙でひなた君はわかったのです。
しぐれさん、本当は遠足や運動会に出たいんだと。
「秋の運動会、出ようよ! 大丈夫! おれが出ると晴れるから」
「いいから帰って!」
何度もまくらをぶつけられても、ひなた君はあきらめません。
「ゼーったいに運動会出ような! 全員で三組優勝しよう!」
しつこいひなた君に、しぐれさんはついにギブアップ。
「わかった。考えるから今日は帰って」
「やったあ!! 運動会がんばろう!」
ひなた君は、しぐれさんの手を握り締めます。
「出るって言ってない! 考えるって言っただけ! 手を離して!」
「わかったわかった。じゃあ、明日」
ひなた君は、いつものようにニコニコ笑って、しぐれさんに手を振りました。
遠足では元気が出なかったのに楽しい気持ちになり、スキップして家に帰りました。
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