紙一重

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 歩道に転がっているオレンジジュースを拾おうと腰を屈めた時だった。 「いたっ!」  お尻の鈍い痛みと共に振り向くと、ぶつかった自転車が倒れた。あ! っと思ったが時すでに遅し。商店街入り口に停めてあったたくさんの自転車が、あれよあれよという間に将棋倒しとなってしまった。 「あぁ〜……」  言葉も出ない。最悪。なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ。 「森岡、大丈夫?」  細いのに力があるところは、やはり男子なんだなと堀江を見て思った。何も言っていないのに、私よりも先に倒れた自転車を一台ずつ起こしてくれている。私もやらなくちゃ。 「あぁ、もう! 最悪だ!」  自転車を両手で起こしながら、開いた口からは愚痴ばかり出てくる。 「ほんとついてない!」  自転車はまだある。これ全部起こさないといけない。情けないやら恥ずかしいやら。 「ん? なんか聞こえない?」 「は?」  ハンドルを持ち上げていた堀江の手が急に止まった。険しい顔で何やら耳をすませている。なんで手を止めてるのよ。そんなことどうだっていいでしょ。私は早くこの場から立ち去りたいのよ。  堀江の言動がいちいちイラつく。 「いいから早く……」 「シッ!」
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