19人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「俺んち連れてく」
「え、大丈夫なの?」
「先住猫がいるけど、多分大丈夫。俺が助けたんだし」
ミーミーと鳴く子猫を愛おしそうに胸に抱く堀江。こんな一面があったなんて。
「どっかから迷い込んで、側溝から出られなくなったんだろうね」
微笑む堀江は砂を軽く払いながら、頭から背中にかけて優しく撫でている。その度にかわいいしっぽがフリフリするのを見て、私もほっこりする。
「私、最近ついてなくて。失恋するわ、ジャンケンに負けてジュース買いに行かされるわ、自転車にぶつかりそうになるわ……」
「……ごめん」
目線をそらした苦笑いの堀江はそのまま話を聞いてくれた。
「ペットボトルは転がるわ、自転車将棋倒しだわで、本当についていないと思ってた」
「……確かに、ついていないね」
遠慮なく同意され、ついつい吹き出してしまった。
「でも、これらの一つでも欠けたら、この子は見つけられなかったよな〜って思う」
私たちが見つけなかったら、どうなっていたかな。でも、私たちじゃない誰かが気付いて助けたかもしれない。でも……。
「見つけてあげることができて良かった」
うまくいかないことをすぐに誰かのせいにした。不平不満をいつも何かにぶつけていた。
「世の中、悪いことばっかりじゃないよ」
最初のコメントを投稿しよう!