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明るい声でその言葉は私に向けられた。見えてるのか見えていないのか分からないくらい目を細めて、堀江は子猫を愛でている。
「そうだね」
堀江が子猫にデレデレしているのを見ていたら、イライラしていたのがどこかへ飛んでいった。本当に助けられて良かったって心から思えた。
「病院とかいろいろあるからさ、落ち着いたらこの子見においでよ」
「え、いいの?」
猫ちゃんに会いたいけど、それって堀江の家に行くってことだよね……。猫ちゃんに会いにいくだけ。それだけ。……だよね? 他に深い意味はないよね? いろいろ想像しちゃって、テンパってる。
「命の恩人だからね。いいに決まってるじゃん」
細い目がなくなった。途端に頭の中の好きだった人を消し去った。あんなにイケメンな野田先輩の笑顔より、堀江のなにげない笑顔に心を持って行かれた。気持ちがふわっと軽くなる。文句ばかり言って下を向いて歩いていた私だけど、顔を上げて前に進みたいと全身が言っている。
「じゃあ約束ね」
「おう」
歩道に放置されたペットボトルは、どれも結露して砂まみれだ。私はまた胸に抱えて、高鳴りを抑えられずに早足で歩き出した。みんな聞いてほしい。やばい、私、堀江のこと好きになっちゃったかも!
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