ラインの地

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 眼前には完全武装した騎士や魔導士が勢ぞろいしていた。その数は100人以上だろう。数の上では完全に劣勢だ。 「俺たちはお前たちの行動を阻止するために来た。場合によっては殺害する」  僕はそう叫んだリーダーの顔を見た。高校3年くらいだろうか。美系の顔貌に、金色に輝く髪。プラチナの鎧を着こんでいる。  間違いない。この世界で最大の水資源の持ち主だ。僕たちが雨を降らせば、彼の資産はほぼ無くなる。  見たことの無い騎士もいる。おそらく、リーダーが金で雇った傭兵だろう。  騎士の白刃が、仲間に襲い掛かる。僕の仲間は練達している。切り伏せられることも無く、がっちりと盾で受けた。    騎士のふるまいに、僕たちは衝撃を受けた。武器の設定が『非殺傷スタン』になっていない。普段闘技場で技を競う場合、武器には殺傷能力を持たせない。  だが今は、完全に『殺す気』で攻め込んでいる。  次は火炎魔法の嵐だ。数十発の火球が魔法円の中に打ち込まれる。魔術師の仲間が防御呪文を展開するが、何発かは迎撃をすり抜けて着弾する。 「うわっ」「熱いっ」  と悲鳴が上がる。  僕は鉄が熱せられる金属臭と、肌が焼ける気持ちの悪い臭いを感じた。 「あと3分、持ちこたえて!」  ユミが叫ぶ。  ユミに向かって、何本もの矢が発射される。  僕は前に出て、愛用の剣を握りしめ、全てを打ち払った。矢の加速力を受け止めたため、手首が少し痺れる。  降水の儀式でなければ撤退を考える局面だ。相手は我が方の倍。しかも殺す気でかかってきている。対する僕らは魔法円の完成と、防御、二つに戦力を割かなければならない。 「てめえらが勝手なことを起こすと、俺達の天国が崩壊するんだよ」  リーダーが僕に切りかかってきた。最古参プレイヤーの剣さばきだ。容易には受けも、避けもできない。右頬に熱いものを感じた。切られたのだと1秒遅れて認識される。  僕も連続突きを放った。僕の技は非殺傷モードになっている。良くて気絶させられるだけだ。リーダーは華麗なステップで避け、変則軌道の突きはプラチナの鎧で防いだ。  反撃の刃が僕を襲う。太刀筋が見えずらい。僕は辛うじて、愛刀で斬撃を受け止める。カキン、ガンっ、と金属がぶつかり合う音が響く。  周りも混戦模様のようだ。土煙がもうもうと上がる。だが僕は、隣を見る余裕がない。
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