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04.光と愛
「やっぱり拾った百円を交番に届けたほうが良かったのかな」
打ちひしがれる瑞希に、直輝は首を振る。
「宝くじが当たったのが予想外だったんだ。まさか当たるなんて思ってなかったからさ」
そんな直輝の言葉が瑞希には腹立たしい。
「私が悪いみたいに言わないでよ。宝くじ買おうなんて直輝が言い出さなければ良かっただけじゃない」
「道端に落としたままにしておくよりはいいと思ったんだけどな」
二人のあいだに満ちる険悪な空気。手を触れたら感電しそうな。
百円玉を拾っただけなのに、こんな思いをするくらいなら、はじめから道に落ちてる百円玉なんて見つけなければよかった!
「じゃあこうしよう。今度は募金箱に入れるしかない、千百円を」
直輝の提案に、瑞希はすかさず聞き返す。
「なんで千百円?」
「簡単なことだよ。最初に拾った分の百円と宝くじで当たった千円とをあわせた合計千百円。どちらのお金も、もともとは自分たちのお金じゃないんだから」
直輝の言うとおりだった。
二人はさっきのスーパーに戻り、店頭の募金箱に千百円を入れる。
「これで、俺たちが食べたシュークリームも誰かのために役立つ」
直輝の言葉に瑞希も納得する。スーパーの外はすっかり夜になっていた。
でも、直輝が千百円を募金箱に入れたとき、その夜の闇がぱっと明るく燃え上がったようにも瑞希には思えた。光と愛が夜を照らす薪として与えられ、一瞬だけ太陽の光が闇に満ちたかのように。
「じゃあ帰ろうか」
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