満月

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満月

 重い足取りで表通りまで出た海斗(かいと)は、タクシーを止めて乗り込んだ。 リハーサルが長引きこんなに遅い時間になってしまった。 海斗はこの日とても疲れていた。 ここ最近多忙の日々が続き、睡眠時間もあまりとれていなかった。 とにかく今は一刻も早くベッドに倒れ込みたい。 心も身体もひたすら睡眠を欲している。 深夜の都会を軽快に走るタクシーの窓には、華やかな世界の光にぼやけた街並みが流れていく。  ラジオから聞こえる甲高い声の女性が、「今日は満月ですね」と言っていた。 満月か。最後に月を見たのはいつだっただろう? そんなことをぼんやりと考えていると、タクシーは家の近くに着いた。 何か食べてから眠りたいと思っていた。 しかし家の冷蔵庫は空だった事に気づき、コンビニへ寄ろうと思い 踵を返して歩みを進めた。
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