虹の向こうには

3/18
前へ
/18ページ
次へ
 コンコン。  少し大きめにあたしはノックをした。こんなに大きいんだもの、これくらい叩かないと聞こえないかなって思って。  でも、いくら待っても返事が返ってこない。  もう一度。コンコンコン。  先程よりもう少し大きく。……それでも返ってこない。これはもう叫ぶしかない。 「すみませーん!」  また、返事なし。 …… と、思われた。中で何かごとごと音がする。  少し待ってみた。  がたっ。あたしの右の方から音がした。あ。あんなところに扉がある。あたしの身長と同じくらいの。もしかして、この大きいの、開かないのかなぁ。  その小さい扉から女の子が出てきた。転がったの 方が正しいかな。とにかく、女の子が現れた。  女の子の髪の毛の暗い青い色。曇り空の色みたいな。えっと、藍鼠色だ。腰ぐらいまであるであろう藍鼠色の髪 の毛を緩く巻いてて、紺色のリボンでハーフアップにしている。うす緑のドレス。腰の所できゅっと締められてスカートの裾はふんわり広がってる。ここが、屋根のある所でよかった。屋根がなかったら今頃この子、雨の中に飛び出てた。 「こんにちは! 上の方にいたから降りてくるのに時間がかかっちゃって、ごめんなさい」  女の子は顔を上げて笑顔を見せた。なんて、お人形みたいにかわいい子なんだろう。ぱっちりとしたグレーの瞳にふさふさの睫毛。桃色の頬に、紅い唇。その唇から紡がれるキンキンしない、心地よいソプラノボイス。  まだ小学生くらいかな。お化粧はされてないはずなんだけど、する必要がないくらいかわいい。そんな子が微笑んでる。 「こ、こんにちは」 「あなた、どこから来たの? わたしの言葉通じて る?」 「えっと、言葉は通じてるよ。 どこからっていわれても······。 ここはどこなの?」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加