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ここってどこら辺だろう。今更ながら、周りには近所にない景色。
家が立ち並んで、少し向こうには森があって。その家も、見たことがない。
真っ白の壁に真っ白の屋根。それも、一軒だけじゃない。周りの家が全部同じ色、同じ形。近所にあったら頭に残りそうだもの。
そして、圧倒的にあたしの住んでる地域ではあり得ない──いや、もしかしたらあり得るのかも知れないことに、雨が降ってる。空から落ちてくる水滴。
あたしは鞄から折り畳みの傘を取り出す。雨が降らないと分かっていても傘を鞄に入れとく癖、抜けなかったのよね。
傘をさして、よく見てみると、森の向こうにお城が見える。お城って言っても日本風じゃなくて西洋風。これは、見たことがない。絶対にこんなお城あったら記憶に残るもの。このお城も同じ白い壁と屋根。
それにしても、何で周りに人がいないんだろう。人の気配もない。ただ家が建っているだけって感じ。お城だったらきっと人が一人くらいはいるよね。
かくして、あたしは次にお城へ行くことを決めた。
*
すごい、遠かった。
さっきのところから延々と上りの坂道だった。それにこの建物、さっきのところからじゃ分からなかったけど、ものすごく大きい。見上げて首が痛くなるくらい。
あたしの町には二、三十階建ての家は滅多になくて、まして、こんな大きい建物見たことない。でも、きっとこの建物二階か三階建て。一階一階の天井が高いんだと思う。
とりあえずは、この目の前の巨大なドアを開けてもらうしかない。
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