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まったく、いちいち勘にさわる言い方をする奴だな。烈識はというと、手帳を広げながら、まだポケットを探っていた。もう手帳しか持っていないとか言っていなかったか?
ぼくが烈識のほうをじっと見ていると、いまさらというかのように、あの口調で
「まだ疑っているのですか?」と言ってきた。
「…は?…い、や…別に、まだ、何を探しているのかな~と…思って」
ぼくがそう言うと烈識は一瞬呆けたような顔をし―そうほんの瞬き一瞬の間―出会ってから初めての笑顔を見せ、
「書くものです」
「…は?」
「馬鹿か阿呆ですか?あなたは。…紙に文字を書きたいんです。ボールペンか何か持ってないのですか?と聞いているのですが」
本当にこいつは今まで出会ってきた中で一番苦手な扱いにくい奴かもしれない。
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