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2 マイペースなカメさんを追いかけて
部下を連れずに扉を閉めた僕こと、ボブです。赤毛の三つ編みが揺れ動くと同時にコソコソと呪文を唱え、ツタをアリアさんの足に絡ませました張本人は、開いた先の童話の国にて、空を見上げていた。
「雲ひとつない青空、美味しい空気。なんていい国なんでしょう?」
ウサギくんのクリクリとした瞳、耳がピョンピョンと伸び縮みし、僕を見る。ウサギくんの影になって見えないカメさんはゆったりした声で僕を歓迎してくれた。
「やぁ・・・ほんとうに・・きたんだねぇ」
その声は、落ち着く周波数でも出ているんじゃないかってくらい心地よく、対戦相手のウサギくんはかけっこが始まらないのに大あくびをしている。
「ウサギくん、わたくし、魔法国から参りましたボブです」
杖を振りウサギくんの言葉に翻訳された名刺を差し出す。前足で受け取ったウサギくんが隣にいるカメさんを見下ろし言う。
「カメさんに取材なんてすごい。どんな手使ったん?」
可愛いのは見た目だけ、出っ歯でクリクリした目を細めて、覚えたという訛りを話している。見下ろされたカメさんはゆっくりと首を左右に動かして。
「なにもーしてーないよー」
僕は取材の旨を伝えるとノリがいいウサギくんはブンブンと首を縦に振った。
「ほな、あの木に着いたら、書いてな?カッコ可愛いウサギがいたって」
「ええそれはもちろん」
ウサギくんには悪いがメインはカメさんになる。僕は場を盛り上げるため、数台のカメラを杖で出現させて、定位置に並べて置くと、ノリがいいウサギくんは、腕を組んで準備運動を始めた。
「ボブさんにぃーならして・・・」
スターターピストルだけ地面に置かれたまま、重要な役割を僕に与えてくれる見返りに、“ニッポン”の運動会で有名な曲を流すと約束し、僕は引き金を引いた。
「位置について、用意・・・」
バン!!
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