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背が高くて、さらりとした少し長めの髪、清潔感のある淡い水色のシャツに紺のストライプのネクタイをきっちり結んで、仕立てのよいダークグレイのスーツも着慣れた感じ。整った顔立ちなんだろうけど、それよりも「品がいい」とか「育ちがよさそう」という言葉が先に来る。穏やかな雰囲気で、愛妻家っぽい感じというか。今まで全く縁がなかったタイプ。
会場のざわめきが落ち着くと、先生は再び聴衆に語りかけた。
「改めまして、今回の公開講座を担当いたします、文学部国際文化学科准教授の三浦尚と申します。これから残り……一時間二十五分ほど、よろしくお願いいたします」
先生は優しい声で自己紹介し、微笑んだ。
半端な時間に思わず腕時計を盗み見る。十五時ジャストだ。
「まず題目でもある『楔形文字で書かれた世界で二番目に古い法典』が何かという答からお伝えしますね。それはハンムラピ法典です」
答、いきなり言っちゃうんだ。あと一時間二十五分どうするんだろう。場が持つかどうかが心配になってしまう。
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