661人が本棚に入れています
本棚に追加
たいしたことはしていないのに。
先生の反応を見ていたら、自分の行った作業が役に立っていると実感できて、とても嬉しい。
紅茶やお菓子や音楽。今まで不要だと判断してきたものにふれることが、生きることの楽しみを思い出させてくれている。
でも、これはバイトで、ずっと続けられる訳じゃない。これで一生食べていける訳じゃない。
ヌワラエリアが運ばれてきたので、砂時計が落ち切るのを待って、口に運ぶ。
飲み慣れていない紅茶だからか、味わいを深めているはずの渋みが、なんだかえぐく感じられて。
現実は口当たりのよさだけで構成されてない。
目が覚めたような気がして、もう一度自分の気持ちを考えてみる。
私が本当に気にしているのは、仕事のことなのだろうか?
違う。本当に悩んでいるのは。
好きになってしまっても、どうしようもない、ということだ。
相手は、人を好きになることをやめていて、私のまるで知らない研究をしていて、全然違う世界にいて、本当は会うはずではなかった人。
一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、離れがたくなるのに。余計好きになってしまうのに。
気づかないうちに、タイムリミットは来ていた。
バイトを辞めよう。次に何をするのか、まだきちんと決めてないけど、いたずらに想いを募らせてしまうより、ずっといい。
私は、仮じゃない本当の居場所を、見つけなければならない。
最初のコメントを投稿しよう!