85 S

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「…雨降ったら、相合傘、したい。駅まで」  匡也のセーターを引っ張りながら言ってみた。 「ははっ、もちろんいいよ。なにそれ可愛いなぁ」  がばっと抱きしめられて頬擦りされた。 「なんなら詩音ん家まで送ってくよ?それが1番長く一緒にいられる」  ちゅってまた頬にキスしてくれた。 「…帰したくなぇなぁ…」  匡也がそう呟いた時、遠くからピピピッて電子音が聞こえた。 「あ、できた。待ってて」  唇に掠めるようなミスをして、匡也が部屋を出て行った。    オレも帰りたくないよ?  匡也とずぅっと一緒にいたい 「ごめん詩音、開けて」って部屋の外から声がして、慌ててドアを開けた。 「わ、すごい。いい匂い!」 「食お食お、熱いうちに」  コルクのマットにのってるドリアのお皿と、スープのカップをテーブルに並べる。 「すごい美味そー。匡也が作ったの?」 「作るってほどでもねぇよ。スープはインスタントだし。ほら食え、な?」  向かい合わせに座って、「いただきます」って手を合わせてスプーンでドリアを掬った。  チーズとろとろっ! 「わー、すげ。あ、うまーい」 「そう?よかった。昨夜のシチューのアレンジ。順に器に入れただけ」 「だけって言うけど、オレ的にはすごいよ?」  ケチャップ味のご飯にホワイトシチューがかかってて、チーズがのってる。 「嬉しい。ありがと、匡也」  えへへって笑いかけたら、匡也が、うん、うんって頷いた。 「…詩音が来るからってさ、ちょっと多めに作ってもらったんだ、シチュー」 「え?」 「詩音さ、三者面談の時うちの母親に挨拶してくれただろ?あの時母親にお前の名前訊かれてて…。で、『25日は佐伯が来るから』って」  匡也がちらっとオレを見た。 「黙っとくのもさ、『何で言わなかったの?』とか後で言われたら余計面倒そうだし、でも『友達が来る』とは言いたくないし…、で、『佐伯が来る』って」  とくん、と胸が鳴った。 「…オレ、『今日は羽村と会う』って言って出てきた…」  匡也が「あ」って顔した。 「オレも三者面談の時、お母さんに匡也の名前訊かれたんだ。お母さん、今日はオレが女の子とデートだと思ってて、だから『羽村と会う』って。『友達と』って言いたくなくて、それで…」  2人で目を見合わせて、そしてふふって笑った。 「俺らおんなじことしてるな」 「うん」 「やっぱ気ぃ合うな」 「うんっ」  おんなじ嬉しい
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