ホラーゲームは割とエロいが、当事者になると話はべつだ!①

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ホラーゲームは割とエロいが、当事者になると話はべつだ!①

ca39b8e7-a307-4b37-a743-cd92a5043f19 俺は、ホラーゲームは割とエロいと思っている。 皮膚が黒ずんでただれて、表面が粘着質な液体にまみれた、奇怪な形をしたクリーチャー。 そんな気色わるいクリーチャーが、プレイするキャラを噛みついたり、丸のみにしたり、押しつぶしたり、引き裂いたりするのを見ると、腰が熱く疼く。 まあ、俺は男だから、女のキャラに限るが。 クリーチャーが女キャラを惨殺するのを見て、下半身が元気になる男はけっこういる。 動画配信サイトで、女キャラの死亡シーンだけを集めた動画が公開されれば、「ちょっと、トイレに」「ごちそうさまです」といった下劣なコメントが溢れるほど。 すくなからず同士がいるとはいえ、誤解されやすい嗜好なのは百も承知。 元カノは、俺が例の動画とコメントを見ているのを覗き「わあ、犯罪者予備軍がいっぱい」と頬を引きつらせたもので。 今から思えば、その一言がきっかけで別れたように思う・・・。 いっておくが、現実の俺は人を一回も殴ったことがなければ、殴られたこともない、極極平凡で、どちらかというと気弱な男だ。 現実に暴力沙汰を目の当たりにすれば、膝が震えるし、映画の残酷なシーンは直視できない。 ただ、CGのホラーゲームなら、オールオッケー。 どれだけ残虐に人が痛めつけられ殺されても眉ひとつ動かさず、女キャラがクリーチャーにやられれば、夜のおかずに。 この心理は解せないだろうが、ゲームでしている蛮行を現実でもしたいとは決して思わない。 そもそも現実世界にクリーチャーはいないし、いたとして、きっと俺は真っ先に殺される雑魚だろうし。 「平和な現代に生きていてよかったなあ」とつくづく思いつつ、新作ホラーゲームをプレイ。 長いシリーズものの人気作で、今回は俺の愛する女キャラがメインキャラクター。 週末に発売されたのをいち早く入手し、そりゃあ、休みの間、プレイ三昧。 たまに水分補給とトイレをする以外、夜も寝ずにぶっ通しでプレイをし、でも、さすがに昼ごろにはうつらうつら。 ついにはコントローラーをにぎったまま意識を消失。 夢を見ず、深い眠りに落ちていたのを「おい!しっかりしろ!」と耳をつんざいて瞼を跳ねあげた。 俺の肩をつかみ揺さぶるのは、軍服を着た、いかつい男。 彼の背後にも軍人がいて、暗い俺の部屋を銃についたライトで照らしながら「クリア!」「こちらもクリア!」とあちこちで叫んでいる。 男の乱暴な起し方で、すぐに目が冴えたが、現状がにわかに飲みこめず。 だって、俺の眼前にいるのは、寝落ちするまえにプレイしていたホラーゲームのメインキャラクターだったから。 ガチムチな体をした特殊部隊のリーダーで名前は「ルリオ」。 銃や手りゅう弾を使うより、殴ったほうがクリーチャーにダメージを与えられるという馬鹿力をしているに、通称「ゴリオ」。 直前にホラーゲームしていた影響を受けての夢かと思ったが、肩をつかむゴリオの尋常でなさそうな怪力ぶりは現実味がある。 夢でないとして、俺の部屋にゴリオがいるということは、ひどく危険な状況だ。 クリーチャーが町に溢れて、人人に襲いかかっているなか、派遣されたゴリオたち特殊部隊が、敵を撃退しつつ、できるだけ市民を助けているのだろう。 逃げまどうしかない、哀れな市民の一人が、俺なわけで。 「立てるか!?外にヘリを待機させているから、そこまで一緒にいこう!」 いやいや、メインキャラのあなたといたら、絶対にヘリに乗るまで襲われるでしょ。 そうツッコみたかったが、人の悲鳴や絶叫、発砲音や爆発音が方々から聞こえる切迫した現状で、ノーサンキューはできず。 ゴリオを先頭に、四人に囲まれながら廊下を走っていったら、共同玄関の近くの壁がふっとんだ。 壁の破片を弾きとばし、廊下に踏みこんだのは、相撲とりがゾンビになったような巨体で肥満のクリーチャー。 おおきな手で、俺の隣にいた隊員二人をつかむと、そのまま抱きしめて、トマトのように破裂を。 大量のトマトケチャップを浴びて、放心する俺のまえに、すかさずゴリオが立ちふさがり、必殺の右拳を食らわす。 が、肉厚だからか、すこしよろけただけで、また手を伸ばしてきたのを、二人の隊員が「撃てえええ!」とマシンガンを連射。 ダメージを受けつつ、クリーチャーは倒れないで、太い腕を振りまわして暴れまわる。 その手につかまらないよう、よけながら、ゴリオは殴りつづけて、二人の隊員はマシンガンで援護。 目のまえで一進一退の戦いが繰り広げられるなか、立ちつしていたら、ふと背後のドアが広く音が耳について。 振りかえると、ドアの隙間から複数の触手が這いでてきた。 ぎょっとする間もなく、触手が体にからみつき、そのまま引っぱられる。 叫ぼうとすれば、触手に口をふさがれ「しまった!」とゴリオが気づいたときには時すでに遅し。 触手で俺を拘束するそれは窓から外にでて、町の動乱に紛れて、どんどんアパートから遠ざかっていき。 追いかけてくるゴリオに、泣き叫んで助けを乞いたかったものを、触手のせいで呼吸がままならず、そのうち失神を。
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