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しばらくホームで立ちすくんでから、ようやく頭が働き始める。こんな時のためのスマホだ、と気づいたのだ。
スマホの地図アプリで現在地を確認した上で、知り合いの誰かに連絡をとり、迎えにきてもらおう。
そう考えたのに、スマホを見れば圏外のマーク。電話もメールも無理であり、地図アプリはなぜか開くことすら出来ない状態になっていた。
ほとほと困り果てた私は、改めて周りを見回しながら、大きな声で叫ぶ。
「おーい! 誰かいませんか!?」
人々が寝静まった夜遅くだから、これが都会ならば近所迷惑に違いない。しかし声の届く範囲に誰もいない場所では、そんな心配も不要。いや心配するというより、逆に「うるさい! 静かにしろ!」と誰か出てくるのを期待するくらいだが……。
あたりは静まりかえったままで、私の声に応じる者は一人もいなかった。
「うん。無人のホームに突っ立っていても、何も解決しないぞ」
自分に言い聞かせるように呟きながら、私は左側の雑木林に向かって歩き始めた。
集落あるいはせめて一軒だけの民家でもいいから、とにかく人間を探そう。ならば山奥よりは平地の方が可能性が高い。おそらく林を越えた辺りに誰か住んでいるのではないか。そう考えたのだった。
私の想像を支持するかのように、それらしき林道も見つかった。舗装されていない土の道だが、明らかに獣道ではない。人間の通行のために用意された道だった。
雲間からの星明かりだけでは不十分なので、スマホのライト機能で足元を照らしながら進む。大きな木々に挟まれた小道を十数分、てくてく歩いたところで……。
前方に人影が見えた。
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