雨降れば悪夢も終わる

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    「まもなく南公園前。南公園前に到着します。お出口は左側です」  聞き慣れたアナウンスが耳に入ってきて、意識を取り戻す。  ハッと顔を上げれば、動いている電車の中だった。満員には程遠(ほどとお)いものの、立っている乗客の姿もあった。 「ああ、そうか。夢だったのか……」  小さな独り言を口にする。  ちょうど車内で眠り込んだ現実とシームレスに繋がったので紛らわしかったけれど、目が覚めたら無人駅という(くだり)からは、単なる夢に過ぎなかったのだ。 「見知らぬ寂しい駅で目を覚ますなんて、オカルト系の都市伝説みたいだよなあ」  自分自身に苦笑しながら席を立つ。  既に電車は減速し始めて、南公園前駅のホームも見え始めていた。  妙に尿意を催していたので駅のトイレに立ち寄り、それから改札を出る。  アパートまで徒歩数分。帰宅してから軽くネットで調べてみたところ、私が思い浮かべた都市伝説は『きさらぎ駅』という話らしい。  ただし『きさらぎ駅』の場合は、実在しないはずの奇妙なトンネルを(くぐ)った先の出来事。私のように「居眠りしているうちに連れて行かれた」というパターンとは違う。  とはいえ、微妙に異なる点はあるものの、おそらくこの『きさらぎ駅』の話がベースになっているのだろう。以前にどこかで聞いて意識の片隅に残っていたのをふと思い出して、それが夢という形で現れたに違いない。    
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