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「おいおい、またか……」
翌日の帰りも電車の中で眠ってしまい、目が覚めたら同じ無人駅だった。
いや正確には「目が覚めたら」ではなく、そういう夢の中なのだろう。
見知らぬ無人駅に連れて行かれて、殺人鬼と遭遇する――。内容を簡単にまとめれば怖い夢であり、いわゆる悪夢というやつだ。
しかし夢だと承知している以上、恐怖心は全く感じなかった。むしろこの悪夢を楽しんでやろうという余裕の気持ちで、前夜と同じ雑木林に入っていく。
「なまじ昨日わざわざネットで調べたりしたせいで、類似の都市伝説の話が頭に残って……。それで二日連続、同じ夢になったのだろうな」
分析を口にしながら、林の小道を歩く。起きた後でなく、まだ夢の中にいるにもかかわらず「何故このような夢を」と分析するのは、なかなか珍しい体験だ。
そう考えると、思わず笑みが浮かんでくる。ちょうどそのタイミングで、前方に人影が現れた。
昨日と同様のポーズだ。注意深く目を凝らせば、特にライトを向けたりせずとも、足元に転がっている被害者の姿を視認できた。
「おーい! 殺人鬼くん!」
煽るつもりはなかったはずなのに、ちょっとした悪戯心から、そんな言葉で呼びかけてしまう。
男が動揺したらしいのは、薄暗い中でも見てとれた。
続いて、突然の雷鳴と稲光。
「貴様……!」
憎悪の言葉を吐き出しながら、悪鬼のような表情を浮かべて、男は私に向かって走ってくる。当然のように、血塗れのナイフを手にした状態だ。
どうせ夢なのだから、刺されても痛くないだろう。そう思って避けずに立っていたのだが……。
男が私のところまで辿り着く前にザーッと雨が降り出し、そこで夢は終了するのだった。
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