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ことわざの「二度あることは三度ある」みたいに、さらに次の日も、帰りの電車の中で同じ夢を見た。
いや「さらに次の日も」どころの話ではない。座れなかった場合や座っても居眠りしなかった場合を例外として、電車で眠ると必ず「目が覚めたら無人駅で、殺人鬼と遭遇」という夢を見るようになってしまった。
もちろん細部は少し異なるものの、林の中で殺人鬼を見かけて、その男に刺されそうになるところまでは同じ。雨が降り出した途端に夢から覚めるのも共通だった。
どうせ夢ならば疲れることもないのだから、たまには山に登ってみようか。そう考えて一度、雑木林ではなく反対側の山へ向かってみたのだが……。
山道を上り始めて五分もしないうちに、いつもの男と遭遇。その足元には、やはり女性の死体らしきものが転がっていた。
どうやら殺人鬼は「林の中にいる」というわけではなく、私の行き先に現れるよう設定されているようだ。
この時も男はナイフを持ってこちらへ駆け寄るが、私のところに辿り着く直前、雨が降ってきて夢は終わりとなるのだった。
なお現実の電車内で目覚める度に、いつも私はトイレに行きたい状態だった。とはいえ、小さな子供でもあるまいし「怖い夢を見たからオシッコしたくなる」という話ではないだろう。
むしろ逆に「トイレに行きたい」という気持ちの方が夢の内容に影響しているのではないか、と私は想像している。
例えば小さな子供がオネショする際、水に因んだ夢を見る……みたいな話があったはず。ならば私のこの夢の場合、夢の中で終わりの合図として降り出す雨が、現実の尿意を象徴しているのではないだろうか。
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