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そして今夜も私は、ハッと目が覚めたら、完全に停まっている電車の中だった。
「これで何回目だろう? もう十回は超えているよなあ」
独り言を口にしながら、電車から降りる。
いつも通りの薄暗いホームだ。周りを見ても人の姿は全く視界に入らず、寂しい夜の中に取り残されたような状況だが……。
「さて。今日はどっちへ行こうか?」
すっかり慣れてしまった私は、まるでハイキング気分。
そもそもこれは夢なのだから、しかも降雨を合図に終わることもわかっているのだから、何の心配もないのだった。
無人駅が舞台なことも、最後に雨が降ることも、私の中では理由が分析できている。しかし殺人鬼の男および殺された女性の存在に関しては、まだ意味がわかっていない。
おそらく何かを示しているのだろうし、それらについてもそろそろ解明してみたい。そんな気持ちで、いつもの林へ入っていくと……。
凶器を掲げた男と、その足元に転がる女性。
すっかり見慣れた場面に出くわした。
「おーい!」
私の呼びかけに合わせたかのように、雷の音と光。殺人鬼は物凄い顔で私に向かってくる。
迫りくる男を見ながら「そろそろ雨が降ってきて終わりだ」と思ったが、そこで予想外の出来事が起こった。
殺人鬼のナイフが、グサリと私を刺したのだ。
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