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第23話 ハロウィンの夜
【side カズ】
年間行事で、一番好きなハロウィンがやってきた。
毎年大地と仮装をして街へ繰り出していたけど、今年はパスした。数日前に一度もう一度大地からお誘いの連絡が来たが、今年は行かないと決めたのだ。
「し~んちゃん!」
コスプレ衣装だけが仕舞われているワードローブを開き、俺はしんちゃんを振り返った。
「どれ着る!?」
「着ないよ?」
ひんやり返された。
「俺がメイクもしてあげるから!」
「着替えてメイクして、僕を何処へ連れて行こうとしてるの」
「何処にも出かけないよ~?」
「だとしても、無理!」
ぴしゃりと言われ、俺はしょんぼりした。
「そもそも、ハロウィンは子供達が仮装して大人の家を回るイベントだよ。大の大人が仮装してお祭り騒ぎするイベントじゃない」
おっしゃる通りで。
しゅんとする俺に、しんちゃんはずんずんこちらにやってくると、ワードローブの中からごりごり王子様系の衣装を取り出した。これは、アイドルが育成出来る音ゲーの衣装だ。その中でもキング オブ ロードという曲の衣装で、大地が何ヶ月もかけて作った超大作の衣装だ!
「仕方ないから、これを着てやろう」
「お目が高すぎるっっ!!!!!」
ひれ伏すしかない! これを選ぶとは!
メイクはしないと言われ、しんちゃんはさっそく衣装に着替え始めた。なんだよ! 結構ノリノリじゃん!
「俺は何着ようかな~!」
しんちゃんがアイドル衣装を選ぶなら、俺は~……じゃあ……
「これにする!」
それは、しんちゃんが俺に曲をくれた時、大地にお願いして作ってもらった世界でただ一つの「俺の衣装」。Vチューバーだし、実際にこの衣装を着て人前に出ることはないんだけど、記念に作ってもらったんだ。
しんちゃんは「久しぶりに見た」とにっこり笑ってくれた。
写真をたくさん撮った。ハロウィンのご馳走も沢山作った。
そして、今日の為に作っておいた【お菓子が詰まったかぼちゃお化けのバケツ】をしんちゃんにプレゼントした。
もちろん、合言葉は「トリック or トリート」だよwww
喜ぶしんちゃんが可愛い!
「ねぇ、顔隠すからさ、これSNSに上げてもいい?」
二人でお菓子のバケツを持って撮った写真。
「いいよww」
しんちゃんが恥ずかしそうに笑いながら頷く。
俺は嬉しくなって、早速二人の顔を絵文字で隠して加工を始めた。
「一体、なににUPするの?」
「ん~、どうしようかなぁ。でも赤ずきんのアカウントで上げるよ。一応モデル垢もコスプレ垢も裏垢として持ってるんだけど、俺、自分の衣装着ちゃってるし、赤ずきんくんのでUPする」
「そかそか。だから自分の顔も隠してるんだね?」
「ご名答www」
渋谷の街のハロウィン模様をテレビで見ながら、俺達は二人だけのハロウィンを楽しむ。
俺のコスプレ衣装をしんちゃんにアレコレ着てもらう 着せ替えごっこ も楽しんだ。俺のズボンを穿いては「丈が長い」と怒るしんちゃんが何より一番可笑しかったし、世界で一番可愛かった( *´艸`)
SNSにUPした写真は「すごい! 衣装が本格的!」とお褒め頂き、大変気分が良かったwwww 同時に、相手が作曲家の「shin」だと明記していたので、それに対する反応もすごかった。「実写版の赤ずきんくんも初めて見たのに、全然姿見せないshin様も見れるなんて!」と。
だけど「またコラボが見られるのか!」「新曲か?」という反応も多くて……、ちょっとだけ複雑な気持ちにはなったんだけど……ね。
しんちゃんは俺のこの投稿や、フォロワーの反応を見てるのか……見ていないのか。たぶん見てないだろう。そういうところ少し無頓着な気がするから。
でもふと、しんちゃんは何か投稿してるのかな、と思い覗いてみると、ハロウィンのお化けカレーや魔女の真っ赤なスープ、パンプキンの形に焼いたスイートポテト、etc… 二人で楽しく作ったディナーの写真を投稿していた。
『今日はハロウィンパーティー🎃 人生で一番楽しいハロウィンだった✨』
一人で感動してベソかいたのは、しんちゃんには内緒( *´艸`)
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