27人が本棚に入れています
本棚に追加
第30話 対抗心を燃やす
【side しん】
「・・・しんちゃん。どした?眉間に皺寄ってるよ??」
そう。僕は、今悩んでいる。
「ん。ちょっと、考え事中~」
「・・・・・・・深刻・・・そうね💦 ココアでも入れようか?」
そう言いながら、カズはキッチンに向かう。
ありがとう、と返事をし僕の考え事は進行する。
少し前に、気が付いたんだ。
みんなが呼ぶ【カズ】は
赤ずきん君の【カズ】なんだって。
だったら、僕は…
キッチンでお湯が沸くのを待っているカズを見つめる。
今日もご機嫌だ。いや、僕に元気を分け与えるようにご機嫌を演じてくれているのか?
「カズ~」
「なに~?」
どしたの?って、カズはにっこり振り返って、そんな様子を眺めていたらケトルが「お湯が沸いたよ~」を知らせてくれた。
カズは僕の言葉の続きを気にしながらカップにお湯を注いで、それを僕の目の前に置く。ココアの甘い匂いと、カズのカフェオレの匂いが部屋中に広がっていた。
「カズ・・・・かづ?」
本名的には、【かづ】が正解なのだ。みんなが呼ぶ、ソレとは違う カズ。
だけど、大地君だけは【かづ】であることを知ってる。高校からの友人だって言ってた。大地君は、カズと本名で出会ってる。【かづ】で出会ってる。でも、僕が出会ったのは、カズ。の方で。。。
そこに、勝ち負けがあるわけじゃないけど・・・、あ~~~ぐるぐるする! でもきっと、カズは僕のぐるぐるにも、この違いにだって気が付かない。絶対!!
そんな僕を見て、カズがすっと、僕の眉間をなでながら
「俺、しんちゃんに名前呼んでもらうの、すっごく好き。」
ふふっと笑いながら、カズが言う。
「深刻な悩み、俺でよかったら聞くよ?」
優しく優しく微笑んでくれた。
いつも、優しいカズ。
ちっさなちっさな、大地君への対抗心。
そんな自分が嫌で、泣きそうになる…。
「お?どした?泣くなら、カズくんの胸、貸してあげる!」
「……泣かない!けど、その胸は、誰にでも貸し出してますか?!」
「しんちゃん専用にきまってるじゃーん!」
「じゃあ、使う!!」
僕専用カズの腕の中。
・・・ぎゃーしてもらおう(笑)
最初のコメントを投稿しよう!