第3章 御曹司の彼は、私のことが好きすぎる……らしい

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(なんていうか、手が熱い……)  理仁の手が、何処となく熱いような気がする。でも、それ以上に唯の手も熱い気がする。  だから、唯はなにも言わずに理仁に続く。エスカレーターを降りて、向かったのは二十店舗以上が連なるレストラン街。  店によってはもうすでに行列が出来ているが、そこまで多くはない。早くに来てよかったと、胸をなでおろす。 「唯。なにか食べたいものはあるか? あるのならば、言ってくれ」 「……理仁君」  ふと、理仁のほうに顔を向けて唯は口を開く。彼は、きょとんとしているようだった。少し目の奥が揺れている。  ……唯の態度が真剣なのを、悟ったのだろう。 「あのね、理仁君。私のことばっかり優先しないでほしい」  先ほどからずっと思っていたことを、口に出す。  今日、理仁はずっと唯の意見を聞いてきた。それは多分、唯に楽しんでほしいという一心なのだろう。  それはわかるし、嬉しかったのも事実だ。かといって。 「私、理仁君とデートしてる……って、思ってるの。理仁君も楽しんでくれないと、私……嫌、だから」  最後のほうの声は自然と小さくなる。視線を彷徨わせてそう告げれば、理仁が唯の手をぎゅっと握ってくれたのがわかった。 「……あぁ、そうだな。唯は、そういう子だった」 「そういう子って……」  その言い方だと、まるで唯を子供のように思っているみたいじゃないか。  少し拗ねたように声を上げれば、理仁がハッとしたのがわかった。 「別に、妹みたいに見ているわけじゃない。……ただ、癖、というか」  しどろもどろになりつつも、理仁は弁解してくる。……そんなの、唯だってわかっている。ただ、からかっただけなのだ。  なのに、彼は本気だと受け取って、弁解している。性格が悪いかもしれないが、面白いと思ってしまった。
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