第3章 御曹司の彼は、私のことが好きすぎる……らしい

13/13
前へ
/62ページ
次へ
「理仁君。私、怒っているわけじゃないの。……ただ、少しからかってみただけ」  今までだったら、こういうことが出来る空気じゃなかった。その所為か、自然とこんなことをしてしまったのだ。 「ごめんなさい。……理仁君こそ、怒った?」  彼の顔を覗き込んでそう問いかければ、彼はゆるゆると首を横に振った。 「いや、怒ってない。そもそも、さっきのは俺の失言だった。……俺にとって、唯は女性だ。とっくの、昔に」  真剣な面持ちでそう言われると、こっちが照れくさい。そっと目を伏せて、唯は心の中に湧きたつ嬉しさを押し留める。  そうじゃないと、口に出してしまいそうだ。態度に出してしまいそうだ。  ……こういう人目がある場所では、いちゃつきたくない。だって、恥ずかしいから。 (そうよ。恥ずかしいの。……いちゃつくなら、二人きりがいい)  誰にも見られない場所で、二人きりならば……いちゃついてもいい。唯は、そう思っている。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1316人が本棚に入れています
本棚に追加