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「当たり前だよ」と矢田はなぜかしたり顔になった。「十年ぐらい前の映画だし、それにあんまりヒットしなかった。興行収入も目も当てられない額だったんじゃないかな? いわば超マイナー映画だ。俺みたいな人間じゃないとわざわざ観ないよ」  矢田という男はかなりコアな映画マニアだった。それはもう聞いたことない無名の映画を毎日のように観ては、構成がどうたら演技がどうたらと評論家よろしく語っているような男だ。 「その映画に出てくるのは確かに“まほろ通り商店街”なんだな? 昭和っぽい雰囲気のアーケードで覆われてないタイプの商店街だぞ」 「いやそこまで詳しく覚えてないけど……たぶん、そんな感じだった。気になるなら実際に観てみれば? 今の時代なら配信サービスとかにあるんじゃない?」  帰宅するとともに僕はリビングのテレビで例の映画を検索した。
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