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そこに登場する商店街は僕がイメージするものと寸分違わない光景だった。つまり僕の記憶に残る“まほろ通り”は映画のものということになる。しかし僕はこんな映画観たこともない。テレビで放送されていたのを偶然観て、意識に取り込んだのだろうか? いいや、違う。僕はこの“まほろ通り”をこの足で歩いた。記憶違いではない。
せっかく解決の糸口が見つかったというのに謎は深まるばかりだ。映画の“まほろ通り”と記憶の“まほろ通り”に繋がりが見出せない。
「あら懐かしい」
事件は迷宮入りかと諦めかけていたとき、ちょうど洗濯物を取り込んできた母がリビングを横切った。彼女の視線はテレビへと注がれている。
「母さん、この映画知ってるの?」
「何言ってるの? あんた出てるでしょうに」
「出てるって何に?」
「だから映画に。それ『時をかけるバス』でしょ? 覚えてないの?」
初耳だった。僕はいつから映画俳優になっていたのだろうか。それにしてはキャストに名前がないのだが。
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