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 画面の右下あたりを指す。その先には小さな頃の僕がいた。俳優の陰になって見えにくいが、ご丁寧にランニングシャツに短パンという昭和の子供スタイルまでしている。 「本当だ……」まさか自分が銀幕デビューしているとは思いもしなかった。しかしそこで新たな疑問が浮かび上がる。なぜエキストラをしていたことを忘れていたのだろう。人生の中で大きめのトピックだと思うのだが。  それになぜやめたのだろう? 続けていたら今や大スターという可能性もあったわけなのだから惜しいことをした。  そのことについて訊ねると母は「あんた屋根から落ちたことがあったでしょう」とこれまた懐かしい話を持ち出した。 「あれで入院までして。それとカエデちゃんのこともあって、塞ぎ込んじゃってね、それでやめたのよ」  カエデちゃんのこと、とはたぶんカエデを助けようとした僕の方が重症だったことだろう。たしかにあのときは、女のカエデより弱っちいことに少なからず傷ついた。それで自信をなくしてエキストラをやめたというのは理解できるが、エキストラをしていた事実までも忘れるものだろうか?
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