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僕は微かな記憶に残るまほろ通りを思い浮かべる。そこはどこか昔懐かしい感じのする場所だったような気がする。
「おぼろげだけど、『ザ・昭和』って感じの商店街だったような気がする。道の両側にいろんなお店が並んでるんだ。八百屋、電気屋、布団屋、映画館……他にもたくさん。アーケードに『まほろ通り商店街』ってあって、そこで「ああ、ここはまほろ通りっていう道なんだ……」って思った。記憶の中で僕はその通りを歩いている。夕焼けが見えて、早く帰らなくっちゃと思いながらも道がわからないんだ」
「それいくつぐらいの出来事なの?」
「最近ではないと思うんだ。背も今ほど高くなかったし、たぶん小学生ぐらいかな……?」
「遠くても十年以内の出来事で、昭和っぽい商店街かぁ。心当たりはないな……あっ」
「『あっ』ってなんだよ。心当たりあるのか?」
僕が訊ねると、カエデは「うーん」と唸って氷が溶けたコーヒーを啜った。
「心当たりっていうか、ウチらの高校近くに商店街あるじゃん? さびれてるけどあそことかは、どうなのかなぁって」
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