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どうやらこの商店街には手掛かりはないらしい。これでまた振り出しに戻ってしまう。
「へいお待ち、豚骨ラーメン一丁」
カウンター席に座る僕の目の前に置かれた。顔が全部埋まりそうな大きなどんぶりには大切りにされたチャーシューが三枚も入っていて、その隣にはいい塩梅に黄身がとろけている玉子がちょこんと添えられていた。
この店で食事をする予定ではなかったのだが、話を聞く手前何も注文しないというのも角が立つ。それに自分でいうのもなんだが、僕は育ち盛りの男子高校生だ。いくら昼に弁当を食べたといえども午後の授業を終え帰る頃になるとお腹の虫が大合唱を始めている。
「昼ごはんも食べたのに、よく食べれるね」
隣の席に座るカエデは、呆れ顔で肩をすくめた。何も注文していない彼女の前には水すら出されていない。注文しない奴は客じゃないということだろう。この店主、意外と厳しいところがあるようだ。
「カエデは何か頼まないのか?」
「晩ご飯前にラーメンはちょっとね。カロリー摂りすぎになっちゃう」
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