1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
彼女も変わったものだと思う。「カロリーの摂りすぎ」なんてセリフを彼女の口から聞けるとは成長というのは素晴らしく、そして少し寂しい。小学生の頃は僕よりも男らしい少女だったというのに。彼女のヤンチャ坊主を語るエピソードは数えきれないほどある。その中でもトップクラスを誇るのはあの事件だろう。
それは僕たちが十歳の頃の出来事だった。
僕とカエデの家は間に別の家を挟んで並んでいた。共に自室が二階あったため彼女はうちを訪ねるとき、ものぐさして屋根伝いでよくやってきていた。正直、落ちたら危険だし足の裏は汚れるしで普通に玄関を経由した方が利口だったと思うのだが、ヤンチャな彼女にはそういう考えはなかったようだ。
それに今から考えれば、屋根の上といえど他人の敷地を勝手に通るなんて不法行為ではないか。当時、よく通報されなかったものだ。まあ、両親にはめちゃくちゃ怒られてはいたようだが。
それでもカエデは屋根を歩くことをやめなかった。
僕がいくら「危険だからやめなよ」と言っても、彼女は「いいのいいの、だって近道なんだもん」とまったく聞き入れてくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!