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あの頃の僕には将来、カエデがカロリーを気にするような普通の女の子になるとは、少しも想像できなかったことだろう。なんたって今でも彼女の抑え気味の性格に日々驚かされているのだから。
「ラーメン、冷めちゃうよ?」
カエデの言葉に僕は動きが止まっていたことに気づいた。せっかくのラーメンがのびてしまう。急いでかき込んでいると、店主の男が「そういえば」と口を開いた。
「にいちゃん、西高生か?」
「──そうですけど」
口の中のものを飲み込みそう答えたとき、店に数人の客が入ってきた。彼らはテーブル席に着きそれぞれ注文を済ませる。店主はそれに応え、麺を茹で始めながら話を続けた。
「たしか西高に黒縁メガネをかけた先生がいたろ」
シバセンだ! と隣のカエデから声が上がる。
シバセンこと柴田先生は僕らの学校で社会科全般を担当している先生だ。トレードマークは縁の分厚い黒縁メガネ。どこかテレビで観るお笑い芸人を彷彿させる彼は、その人柄の良さから生徒、教員問わず好かれている。
「柴田先生がどうしたんですか?」
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