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 とは言っても、俺は浮気とかはしなかったけど面倒くさがりだからメールとか返すのもすぐダルくなって、いつも半年ぐらいで別れてた。他にも体の関係だけ持ってた年上のお姉さんとかもいたよ。でも田舎って狭いから、飲み屋で知り合ってその場限りでエッチした姉ちゃんが、ツレの彼女の姉貴だったりするからびっくりするよね。しかも何故だかそれをみんな知ってるんだから勘弁してほしい。  でも笹原先輩を好きになってからは、もう笹原先輩にしかそういう気持ちにならなくなってしまった。女の子に裸で隣に寝られても俺のは全然反応しないだろうし、そっと毛布をかけてお家に帰らせる自信がある。というわけで次は本題の笹原先輩の話だ。今までの話は流し聞きでもいいけど、ここからはよく聞いて欲しい。  十二月とかいう変な時期に会社に放り込まれた俺は、泣く泣くシルバーアッシュにしていた髪色を黒色に染め直して、おっちゃんと一緒に社内の挨拶回りをしていた。そこで俺の運命の人、大大大好きな笹原 茉里先輩に出会ったのである。  真っ黒な髪を下の方で一つにまとめあげて、本当に真面目そうな女の子だなっていうのが最初の印象。そして実際に笹原先輩は本当に真面目で働き者だった。  うちの会社は倉庫の現場も事務所も男ばっかりで女はマジで少ない。その中でも笹原先輩は一番年下だから事務作業も雑用も全部やってた。領収書まとめたりとか、現場のライン作業の手伝いとか来客が来たらお茶を出したりとか掃除も全部。それだけの仕事を一人で回すのって本当に大変で、でも笹原先輩は時間を見ながらクルクルと動いていた。それって本当にすごいことだと思う。俺以外にはあんまりそんな風に思われてなかったのがマジで不思議だったけど。  まあぶっちゃけ俺も入社したての頃は、職場にうっかりピアスつけてきたの注意されたり、前日にツレとオールして寝坊したのを怒られたり、煙草休憩が多すぎるって小言を言われたり、休憩中に雑談してたら睨まれたり、普段全然喋らないくせにウルサイ女だな〜と思っていた。  でも今考えたらその時の俺をボコボコにしたい気持ちだ。あと笹原先輩は俺が入社する二年前に高卒で就職してるから、出会った時は笹原先輩が二十歳で、俺は二十二歳。年下の先輩ってやつ。でも仕事してる時は自分の方が年上なんて忘れている。それくらい笹原先輩はしっかりしてるんだ。
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