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 でもその後に若旦那の部屋にも連れて行ってもらったら本棚に沢山本が並んでてさ。難しそうな歴史の本とか経済の本とか。俺は歴史にも経済にも興味無かったし、漫画しか読まないから「すごいですね〜」って言いながら眺めてた。そうしながら「金持ちは有名な観光地とか行き尽くしてるから、家で読書の方が良いのかな」って思ったんだ。  そんなこと考えてたら、本棚の中に恋愛小説があってさ。前に付き合ってた彼女が読んでたから知ってたんだ。俺が指摘したら若旦那は恥ずかしそうにしてたけど「実はそういう本が一番好きなんだ」って笑ってた。いつも隙がない若旦那の人間らしい一面を知ったみたいで、その時の俺は何だか嬉しかった覚えがある。  それから一年経って、おっちゃんから「いい加減パソコンでの作業も覚えとけ」って言われて、それで本格的に笹原先輩に仕事を教えてもらうことになった。それでおいおい二人で現場や事務作業のマニュアルを作ることになった。今までそんなものが無くてフィーリングでやってたから、これからの新人のために作るんだってことで。笹原先輩とぐっと距離が近くなったのはそれからだったと思う。  そして俺が笹原先輩のことを本格的に好きになったのも、ここからだった。
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