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だけどさ、いくらなんでも人混みが多いこの街中でジャンビーアを振り回すわけにもいかないし、しかもオレよりもずっと背が高い大人の兵士を一度に4人も相手にできる自信はない。
……最悪だ。
前も後ろも塞がれた。
オレに逃げ道はない。
行き交う人々は、『オレ』っていう、泥まみれで、ちっぽけな人間の運命が終わる瞬間を面白がっているのだろう。
立ち止まり、ジロジロ見てくる視線が、オレの体に突き刺さる。
「……っつ!!」
――屈辱だ。
悔しくて悔しくて仕方ない。
オレは下唇を噛みしめ、捕まることを恐れた。
苦しみや悲しみも知らない、のうのうと暮らしている王の手先。
奴らに捕まるのを覚悟したら――。
「ぅえっ?」
オレの右腕が急に引っ張られた。
おかげで、抱えていたリンゴやらパン。
それからメロンがオレの目の前で宙を舞う。
そうかと思えば、オレを捕まえようとしていた前後にいる兵士たちは、『オレ』っていう標的を失ったことで兵士同士で勢い余ってぶつかり、倒れた。
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