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兵士として各地を転々としている間、幾度となくユーリィの噂を聞いた。隣国のユーリィって奴が戦車を何台爆破したとか、東の基地を攻め落としたとか、南の地域を占領したとか。ユーリィはこの国でも、隣国でも知らぬものはいない存在となった。俺はそんなユーリィと幼なじみだってことはずっと隠してきた。そんな話を聞くたびに、あの優しかったユーリィが、と信じられなかった。だけど、俺だって各地で兵士として働いていた。敵を撃ったこともある。ユーリィと違うのは、俺はたいして活躍も出来ず、いつも負けてばかりだったってことだけだ。ユーリィは自分の国の為に戦い、俺も自分の国の為に戦った。それだけの事だし、それは許す、許されないの問題じゃないのだろう。だけど、俺はユーリィを許さない。許そうなんて気持ちは、たぶん俺が死ぬまで出て来ないだろう。
双子のように育ったユーリィは隣国で英雄になった。そして、今、この国で一番憎まれている。
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