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別れ付きの出逢い
紅葉も近づいてきたある田舎街。私は一目惚れをした。
いや、一目惚れをしたかったから、心がそう思い込んだだけかもしれない。でも、この感覚は確かに初めてで、私の眼が初めて、認識できなかった色で、『透明』が嬉しかった。
身長は160くらいの決して低くはない私でもかなり高めに感じる男子。最近流行りのマッシュとかセンターパートではなく、そこらへんにいるザ・平凡の髪型。鼻は高く、目は大きいわけではないのに、はっきりしていて、誰がどこから見てもイケメン。
雰囲気がそう思わせたのか、本当にそうだったのかもしれない。とにかく、透明でキラキラしていて、彼を見ているとまるで純水を眺めているようだった。私はまるで無生物を見ているような感覚に陥っていた。
大凡1分私は彼に見惚れてから、現実に戻った。
揺れる電車の中、私は不安定な状態でいたから、バッグの中身を床に散乱させてしまった。あちこちに散らばった文具たちは自ら私から逃げるように転がっていく。
田舎に越してきて思ったことだけど、とにかく人が温かい。オレンジや黄色、赤といった暖色がかなり強く見えた、都会とは大違いだった。
私の文具たちを会社員だか、農家さんだか、高校生だか、中学生だかが、皆疑う良しもなく、拾ってくれる。その中で、拾おうと素振りを見せたが、その男子は屈み始めた膝を伸ばし、また窓越しへ目線をやった。
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