才能の価値

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 なんとなく。本当に気持ちの隅でいやな予感はしていた。私の中でいつもと違う感触。雪からチラリと覗いていた自信に満ちた赤。  私だって頑張った。歴代最高の3位。でも、雪に敵わなかった。雪は今まで10位台を行き来していたのに、急に1位なんて。  ⋯⋯勝てるわけない。 「美優って頭良すぎだよね」  校内に貼り出される順位は文理各15位まで。莉緒も瀬奈もそこには載っていない。二人の言葉は皮肉でもなんでもなく素から出た言葉に間違いない。でも、私はすぐ背後にいる2人を見て、色を確認することはできない。今は誰の顔も見れなかった。見る自信がなかった。私の存在をまた否定されそうだった。それが怖くて⋯⋯。 「帰る。具合悪い。先生に言っといて欲しい」  登校して1時間も経っていない.。二人のことを無視して、私は何かに追い出されるように、校舎を後にした。
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