【4P】見知らぬ花嫁

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教会への道すがら、僕はぼんやりと過去のことを考えていた。 こんなことになったのは、元々は岡林に金を借りたことが原因だ。 工場をなんとか存続させたいと、とにかくその一心だった。 居酒屋のママに紹介してもらった岡林は、個人の金貸しだった。 違法な高利貸しだったが、僕はすでにあちこちから借金をしていて、もはや僕に金を貸してくれるところはもう闇金しかなかった。 さすがに、闇金よりはまだマシだろうし、ママの知り合いということで、僕はつい岡林に金を借りてしまったのだ。 だけど、そんなのは焼け石に水でしかなかった。 工場は潰れ、借金だけが残った。 すでに、人生の折り返し地点をも越えてしまった僕には、ろくな仕事さえない。 僕は、日雇いの仕事をしながら、岡林に金を返し続けた。 しかし、利子を払うだけで精いっぱいだ。 ただ利子を返すためだけに、くたくたになるまで働く日々… 体力にも陰りが出始めている。 いつまでこんな暮らしを続けられるのかわからない。 不安ばかりが募っていた。 考えてみれば、本当に不幸な人生だった。 子供の頃はまだ工場もうまくいってたから、それなりに幸せではあったけど… 不況になり、父さんが倒れて、僕が工場を仕切るようになってからは、とにかく休む暇もなく… 限界まで頑張っても、結局、僕には工場を立て直すことは出来ず、工場を手放してもなお借金は残って… 結婚も出来なかった。 楽しい記憶も皆無だ。 (これから先はどうなるんだろう?) さらに、過酷なことが待ち受けているのか? それとも、僕はこれから本当に楽になれるのか? 岡林は言った。 僕が黙って結婚に応じれば、残りの借金をすべてチャラにすると。 僕は、その言葉に飛びついた。 だけど、時が過ぎるにつれ、言いようのない恐怖に苛まされた。 こんなうまい話があるはずがない。 僕は、やってはいけないことをやってしまったのではないか?と思うと、体が震えた。 しかし、もう迷う時間さえない。 僕の目には、結婚式を挙げる教会が映っていた。
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