【4P】見知らぬ花嫁

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教会に入ると、岡林がすでにいた。 「あ、岡林さん…こん……」 「あの部屋で、服を着替えて来い。」 「え?は、はい。」 挨拶さえする暇も与えてもらえず、僕は部屋に向かった。 今日の岡林は、なんだか機嫌が悪そうだ。 元々愛想の良い人ではないが、今日は沈んでいるようにも見えた。 部屋に入ると、礼服が準備されていた。 僕は、言われた通り、それに着替えた。 鏡に映った僕には、純白の礼服が全く似合ってない。 あまりに似合わな過ぎて、笑いが込み上がる程だ。 日に焼けた、結婚をするには老けすぎている顔が浮きまくっている。 僕の両親は、この姿を雲の上から見ているだろうか? 見ていたら恥ずかしい… それに、心配をかけて申し訳ない。 (父さん、母さん…どうか、僕を守って下さい。) 申し訳ないとは思いながら、つい心細くて、心の中でそんなことを祈った。 「準備は出来たのか?」 不意にドアが開いて、岡林が顔をのぞかせた。 「は、はい。」 「じゃあ、早く来い!」 礼拝堂の扉を開くと、そこに参列者は一人もいなかった。 花嫁は車椅子に乗り、すでに主祭壇の前にいた。 具合でも悪いのか、それとも何らかの障害か? 別にそんなことはどうでも良いが… その場所に神父はいなかった。 おかしいなと思いながらも、僕は、花嫁の後ろ姿を見ながらひとりでバージンロードを歩いて行った。 「あ、あの…今日はよろしくお願いします。」 僕は小声で花嫁に声をかけた。 花嫁は俯き、何も返事をしなかった。 「大垣満は岡林美津子を妻とするな?」 僕らの前に立った岡林が神父の真似事をする。 彼は今『岡林美津子』と言った。 岡林の身内なのだろうか? 「は、はい。」 僕にはそう言うしかない。 「よし、これでお前たちは晴れて夫婦だ。」 そう言うと、岡林は花嫁の車椅子の後ろに回り、それを動かした。 その時、ぐらりと花嫁の体が前のめりに車椅子から転がり落ちたのだ。 (ま、まさか!?) 床に転がったその体は、ぴくりとも動かなかった。
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