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細い指先で、少女は雨粒を手のひらに描いていました。彼女の名前は美咲(みさき)で、か弱い身体と儚げな笑顔が彼女を特徴づけていました。彼女はいつも雨を待っているのです。
ある日、美咲は窓辺に立ち、広大な空を見上げました。空は澄み切っていて、一つの雲もなく、日差しはまるでガラスのように輝いていました。しかし、美咲の顔には不安が浮かんでいました。雲一つない晴天が、彼女の心を重くしていたのです。
美咲は静かに願いました。「どうか、雨が降りますように。この地に生命の水を降らせてください」彼女の祈りは、風に乗って遥か彼方へと届くことを願っていました。
すると、突然、大地が揺れました。美咲は恐怖に顔を歪めましたが、その揺れが次第に鎮まると、彼女は窓の外に目を向けました。
驚くべき光景が彼女を待っていました。地上から天へと、水滴が逆さまに舞い上がっているのです。まるで逆再生されているかのように、雨が降らずに空へと昇っていく光景は、美咲の目を見張らせました。
美咲は歓喜の声をあげました。「見て、見て! 雨が上昇していくの! 私の願いが叶ったの!」彼女の声は窓の中から外へと飛び出し、広がる大地に響き渡りました。
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