タイム・イズ・スパークル

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   *  私の新しくたどり着いた町は、どうやらずいぶん現代的な都会らしかった。人混みの雑踏の中、ぽつんと佇んでみる。確か令和時代はこんな感じだった。また令和時代に戻ってきたのかもしれない。  様々な時代を行き来するが、当然同じ時代に到着することもあった。弥生時代、奈良時代、平安時代、江戸時代、明治時代、令和……覚えているだけでもそれくらいの時代で生活をしたことがある。もっとあったと思うがはっきりとは覚えていない。  何年なのかわからないおそろしく古い時代もあったし、たぶん弥生時代くらいかなあとか、曖昧なときもあった。卑弥呼の時代を生きたことはあるが、卑弥呼に会ったことはない。  平安時代の貴族になって歌合わせばかりしていたようなときもある。歌合わせはけっこう楽しかったが、失敗したときの恥ずかしさが未だに忘れられない。  おそらく江戸時代と明治時代は二回行ったことがあるが、時間軸はずれているらしい。今まで同じ年に到着したことはないし、期限も決まっていない。決まってはいないのだが、だいたいそのときは三年以内に訪れる。急に虚無の世界で道を選ばされるのだ。  以前令和の都会に住んでいた私は、満員電車に揺られて会社に行く毎日がイヤで地方へと引っ越した。奈良県の鹿がいつでも見れる町。伝統ある建造物や遺跡、古式ゆかしい町並み。  どうしてここにしたかというと、以前奈良時代を生きたこともあり、何となく懐かしい気持ちになって突発的に選んだだけだった。  電力会社系列の子会社に務めた私は、設計士として働いた。様々な物の配置や空気の流れまで計算して設計しなければならないので、理系としての知識が必要なのだが、私の人生にしては珍しいことだった。  だから、そのときの令和時代はよく覚えている。どの時代に行っても得意なことは毎回変わってしまうのだが、リケジョだったのは記憶に残る限りこの時代だけ。  趣味で将棋教室に通っていた私は、そこである青年に出会った。それはもちろん彼。わざわざ都心から離れたにも関わらず、出会ってしまうものなのだとかなり驚いた。それと同時に落胆。私に出会ったということは彼は、三年以内に必ず死ぬ。  
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