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本で読んで考えたり、令和であればネットやオンラインで学んだりもする。そういえば将棋だけは、ほとんどの時代で趣味にしていたような気がする。それなのに未だにこのレベルとは、急に恥ずかしくなってきた。
「金が浮いてますよ。それだとちょっと危険ですね」
そう助言されてまた考える。金を戻させてもらって、先に銀を前に進めた。これで金も銀も今は取られても取り返せる。
どうしたら駒を守れるかな。どれを紐付けてあげればいいんだろう。どうやったら玉を守れるんだろう。そうやってずっと頭の中で考えていく。
「緊張してます?」
「そうですね。いつもより頭が回らないです……ここ、玉は逃げたほうがいいですか?」
「ですね。すぐにどうこうなるわけじゃないですが、睨まれているだけでイヤですよね。軌道から外してあげるのが一番です」
私の玉は、角の軌道にあった。間に他の駒がいくつかあるので、すぐに取られることはないが、やっぱりよくないことらしい。
角は斜めであればどこでも何歩でも進めるのだが、使うのが難しいと思う。すごく強いのに上手く使えない。
その点飛車は、縦横に何歩でも進めるので初心者には扱いやすい。扱いやすいのでつい無駄な動きをしてしまうともいえる。そして角は扱いが難しいので、つい放置してしまいがち。結局初心者はもて余してしまう最高の騎士たちなのだ。
彼のような上手い人たちは、角も飛車も同じように強く、そして無駄な動きなく美しく利用する。駒を完全に自分のものにしていた。
私も上手くなりたい。将棋もだし、人生も。上手く扱って彼の人生を救えたらいいのに。
まもなく彼は、自宅の火事で亡くなった。
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